90人が本棚に入れています
本棚に追加
「行くな」
「え?」
「ここに、・・・居ろよ。」
正直な気持ちを告げた。
みずきに、まっすぐ伝えなくては。
この先どれだけの間みずきを待たせることになるのか。
想像しただけで気が遠のいてゆく。
俺がこんなに自分の気持ちを人に言うことなんて
たぶん、みずき以外無いだろう。
素直になれない俺が、其の中から振り絞る本音。
今言わないで、いつ告げる?
「俺から・・離れるなよ」
諦めたように、お皿を机の上に置く。
正座して、俺の膝とくっつく程近づいてくる。
「ここに居るよ。」
みずきが俺の手をぽんと叩く。
右手に在る俺達の証を見つめる。
おもむろにみずきの手を掴み、その指輪をするりと抜いた。
「え?」
何事かと驚く表情を、みずきが見せた。
俺も同じ指輪を抜き取り、部屋に敷かれたカーペットの上に二つ並べる。
普通はリングピローというクッションに乗っているらしいが、そんな贅沢は言ってられない。
最初のコメントを投稿しよう!