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そう....
みずきの会社まで足を運んだ。
会社の受付を訪ねると。
みずきが、笑顔で出迎えてくれた。
いつものように屈託の無い笑顔。
何も知らないお姫様。
「ごめんね、急に来ちゃって」
「ううん、丁度休憩取ろうと思ってたとこなの」
みずきの会社の直ぐ傍にあるカフェに入る。
ランチセットをみずきが頼み、
私はカフェラテを注文する。
普段なら、まだベッドの中で寝息を立てている頃だ。
でも、今日はどうしても知りたかったことがあった。
「それにしても久しぶりだね、会うのって半年振りかな?」
明るい調子でみずきが嬉しそうにしゃべる。
「でも電話はしょっちゅうしてるじゃない。先日だって、リヒトの誕生日プレゼント何にするか悩んでるって電話してきたでしょ?結局何にしたのよ」
「ああ。あれ。うん。」さも楽しそうに笑顔を見せる。
「勿体ぶらないでよ。何をあげるの?」
みずきがあげるものと同じものをリヒトにプレゼントする。
必ず身に着けてくれる。それが、みずきがあげたものであったとしても、
私があげた物と”同じ物”であることには変わりない。
だが、みずきの答えは予想を反していた。
「実は、誕生日に崇を驚かせようと思って。【EINS】メンバーと一緒にサプライズライブをするんだ。」
「え?なにそれ」
「崇の誕生日にね、ノブくんたちと一緒に曲を披露するの。
崇だけのためのバースデーライブ。
そこで私がボーカルをやるんだ。」
へえ・・そう。
そういうこと。
物じゃなくて想い出をあげるってこと。
形の無いものを、プレゼントするんだ。
「てことはクラウトとかとも一緒に練習してたんだ。」
私を毛嫌いする男の名前を上げた。
「うん。頑張ってみたけど、歌のセンス。私には無いみたいで、凄く皆に迷惑かけっぱなしなんだ。」
苦笑いをしながら、先ほどサーブされたばかりの、アサリがたっぷり入ったパスタを口に運ぶ。
湯気と共に香りまでが対面側にまで漂う。
「美味しい」
蕩けるほどに幸せそうな笑顔を見せて微笑むみずきを、眺めながらカフェラテを啜る。
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