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「なんでもないの」
彼女に何かを言うことは危険だ。
吉住＝（イコール）笹沼という,
ダイレクトにパイプラインが出来上がっている。
それに、誰かに今日起きた出来事を告げるほど、
心の中は整理されていない。
「彼氏となんかあったの？」
「ううん、別に」
努めて笑顔で答える。
瞼がまだ熱を持ち、重く圧し掛かっている。
心配げな表情で、私の腕を掴む
「もしかしてDV...とか？」
「違うってば、彼氏のことじゃないよ」
慌てて訂正した私を訝しく思ったのか、
さらに心配な表情をした。
「ちょっと昨晩ね。
めちゃめちゃ泣ける映画見たの。
それで号泣しちゃって、
さらに、寝坊しちゃって、
ほんと、馬鹿だよね」
今作った嘘。その場限りの嘘だ。
「ホント？」
さらに私の腕を両手で握る。
其の手のひらの上を撫でた。
「ホントだよ。」
「嘘、顔みればすぐ判る、映画なんかじゃないでしょ！」
「う...」
...ばれてる。
「わかったわかった。言いたくないなら仕方ないな」
諦めたようにため息をつき、
吉住はこれ以上の追求はやめたようだ。
今のところ、だろうけど。
「でもね。みずき、何かあったら言ってよ。
女を殴ったりするDV男とかってさ、私、絶対許せないタチだから。
いざとなったら助けてあげるからね！」
腕まくりするフリをして、強気に吉住が言う。
「私の彼氏をDV男とか言わないの！もう！」
怒ったフリをする。
心に突き刺さる嘘。
彼氏って。
一体
.........誰？
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