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「ここに、、200万はいっています!!
残りは、少しずつ渡しますから、
ここに、この店に置いてもらえないでしょうか?
お願いします!!」
通帳の固い紙を握りしめながら、
頭を深く下げた。
「ええ?手付金入れてもらってもなあ、
他の車入れる手配しちゃったし....」
揺れる視線を、車と私へと交互にむけながら不満を、男は告げた。
「お願いします!!此処にこの車がないと困るんです!
お願いします!!!絶対に払いますから!」
「お願いします!!」
男の足にすがりついた。
手に握り締めたのは、ウチが作った通帳。
この中の数字の全ては、
いつか彼のために使おうと思っていたお金だ。
だったら、
今此処で使うべきでしょう?
「わかったよ。
でも、早く支払い終えて引き取りに来てよね。
こっちも
ずっと置いておくわけには行かないからさ」
溜め息混じりに渋々だったが、男が引き受けた。
その言葉に、心の中に光が差し込む。
「は、はい!!アリガトウゴザイマス!!」
思いっきり頭を下げ、
自分の胸が熱く、そして、目尻から涙が溢れていることに気づいた。
嬉し泣きなんて、
そんな涙を流すことなんて、一生無いと思っていた。
ほんの少しだけ、彼の役に立てた。
ほんの少しだけ、
ウチが居る意味が生まれた。
ただそれだけが、
嬉しくて仕方なかった。
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