RAINBOW #4

3/35
前へ
/35ページ
次へ
ホテル街の一角にある、小さなカフェに入った。 壁一面に、ラッピング済みのコーヒー豆の袋が陳列してある。 ラメがかった、セロファンに包まれた焦げ茶色の豆を眺めもせずに、 奥のテーブルへと腰掛けた。 黒い肌の人々が、大きなマグカップを掴み黒い液体を啜っている。 徳山が手を上げると、店員がやって来た。 「ブルマン2つ」 ぼそりと零した徳山の注文に頷き、スグサマ厨房へと消えていった。 店の中は狭く、カウンター席と、壁際に設けられた、長テーブル席だけ。 店にいるのは、カウンターを陣取る3人組の黒人男性客と、長テーブルに座った、銀髪の髪を靡かせるグリーンの瞳をした女性と、ショートヘアの白人女性。 そして徳山とウチ。 店内では、聞いたことも無いような言葉が飛び交っており、 異国情緒溢れた場所に足を踏み入れたせいか、 心許無い様子を押さえ込もうと、 目の前に出されたばかりのカップを両手でしっかりと握り締め、ゴクリと飲んだ。 甘ったるい香りと、コーヒーの後から来る苦味が口の中へと広がる。 飲み終えたあとの後味が、鼻の奥に留まりいつまでも消えない。 何故かこの飲み物は、普段口にするコーヒーとは異なる気がした。 とはいっても、 市販の缶コーヒーぐらいしか口にしたことがなく、本場の味など知らないウチが、文句をつける筋合いはないだろうけれど... 「美味いか?」 ウチの様子を確認するように、身を乗り出して徳山は尋ねた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加