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ホテル街の一角にある、小さなカフェに入った。
壁一面に、ラッピング済みのコーヒー豆の袋が陳列してある。
ラメがかった、セロファンに包まれた焦げ茶色の豆を眺めもせずに、
奥のテーブルへと腰掛けた。
黒い肌の人々が、大きなマグカップを掴み黒い液体を啜っている。
徳山が手を上げると、店員がやって来た。
「ブルマン2つ」
ぼそりと零した徳山の注文に頷き、スグサマ厨房へと消えていった。
店の中は狭く、カウンター席と、壁際に設けられた、長テーブル席だけ。
店にいるのは、カウンターを陣取る3人組の黒人男性客と、長テーブルに座った、銀髪の髪を靡かせるグリーンの瞳をした女性と、ショートヘアの白人女性。
そして徳山とウチ。
店内では、聞いたことも無いような言葉が飛び交っており、
異国情緒溢れた場所に足を踏み入れたせいか、
心許無い様子を押さえ込もうと、
目の前に出されたばかりのカップを両手でしっかりと握り締め、ゴクリと飲んだ。
甘ったるい香りと、コーヒーの後から来る苦味が口の中へと広がる。
飲み終えたあとの後味が、鼻の奥に留まりいつまでも消えない。
何故かこの飲み物は、普段口にするコーヒーとは異なる気がした。
とはいっても、
市販の缶コーヒーぐらいしか口にしたことがなく、本場の味など知らないウチが、文句をつける筋合いはないだろうけれど...
「美味いか?」
ウチの様子を確認するように、身を乗り出して徳山は尋ねた。
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