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新宿署の連続婦女暴行事件対策本部と記載された看板の前にある取調室で、聴取を終えたあと、まだざわついた廊下へと出た。
対策本部にいる人数は、取調室に入ったときよりも増えており、
多くの私服警官が、廊下をせわしなく行き来している。
アヤカの自殺も含め、
事件は更に重要度が増したのか、
今後は警視庁と埼玉県警の連携による合同捜査チームが
発足され、更に広範囲で捜査をすると告げられた。
早く捕まえて欲しいという想いと共に、
自らの手で、犯人に報復を加えてやりたいという願いが交差する。
廊下を少し進むと、
待ち構えていたかのように、女の警官が近づいてきた。
「失礼致します」
頭を下げ挨拶をした女性警官の両手に抱えているのは、
アヤカのかばんと、ワンピースの入った紙袋だった。
「瀬名れお、瀬名アヤカさんのご家族の方ですね」
「ええ,,,」
「こちら綾香さんの所持品です。
捜査の関係上、証拠品となっているため、
まだ、お返しすることは出来ないのですが、
ご一緒に確認を願えませんでしょうか?」
「確認?」
「見に覚えの無いもの、
もしくは、アヤカさんが、
普段お持ちではないものなど
御座いましたら、
恐れ入りますが教えていただきたいのですが..」
「...ああ」
薄いゴム手袋を渡され指を通したあと、
鞄を掴み、
簡素なスティールテーブルの上に置いた。
ベビーピンク色の皮のパディントン。
金色のプレートには、ブランド名が彫られている。
真新しく、俺が買い与えたものではなかった。
ファスナーを開けて中身を探る。
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