RAINBOW #5

9/37
前へ
/37ページ
次へ
「アヤカ!!」 追いかける警官達をなぎ倒し、 アヤカの背中へと走った。 バスルームにある、縦に大きく伸びた窓の桟に足をかけるアヤカに、発狂染みた声を上げる。 「ヤメロ!!!アヤカ!」 「....さい...めんなさい.. ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」 アヤカが、窓枠に手をかけ、更に一歩足を外へと向けながら、謝罪を告げる。 刑事の一人が、興奮状態のアヤカにこれ以上近づくことをためらったのか、警官達を制止させた。 まぶたが腫れ上がっているせいで、アヤカの瞳の色は見えない。 奥から溢れ出る透明な光が、頬を濡らすだけだ。 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい...」 念仏のように謝罪の言葉を繰りかえすアヤカのほうへと、慎重に腕を伸ばした。 「アヤカ...判った。わかったから。 こっちに来い」 警官が足踏みをする中、俺が手を差し伸べた。 だがアヤカは大きく首を振り、 俯いたまま、言葉をポツリ、ポツリと告げはじめた。 「....やっ... ちゃ駄目だって、 アレだけ.... 散々言われたのに... ごめんね... あにぃの言ったとおりだったよ... ウチ...馬鹿だった。 なんにも知らなかった、 全部... ....間違ってた...」 「そんなこと、もういいから、 兄ちゃんは怒ってないぞ、」 「...... ウチね、寂しかったんだぁ...、 ただいまも、 おかえりも、 聞こえない家に帰るのが嫌で堪らなかった.. 一人ぼっちだっていう、 孤独に押しつぶされそうで、 苦しくて...、苦しくて...、 自分の場所、 ずっとずっと欲しくて、 一生懸命追いかけられるもの 見つけたくて... そこに、 あるもので良かったはずなのに、 気づいたら、 こんな場所まで来ちゃったよ... なんで、,,, こんなんなっちゃったんだろ。 なんで、こんなことしちゃったんだろ... 兄ぃ、御免ね。 馬鹿でしょうもない妹で...御免ね... いっぱい、嫌な事言ったけど、 大好き....だったんだよ..」 アヤカの頬を伝う涙の雫が、夜風に吹かれ消えていく。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加