- Gedachtnis 記憶 -

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涙が溢れ始め、タオルを取りに、 バスルームを一度出た。 涙をタオルの上に染みこませながら、 声を押し殺して泣いた。 未だに、女の前で泣くことが出来ない。 涙は女同様、武器だと知っているのに、 本当の涙だけは、 誰にも見せちゃいけないパーソナルスペースだという 屁理屈みたいなプライドが、邪魔をしている。 ひとおり泣いたあと、 バスルームへと戻った。 「あ!!!」 バスタブの中に落としつづけていたシャワーが、 湯船にたまり、 横倒しになった彼女が沈んでいた。
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