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香が此方へと風向きを変えて、鼻をくすぐり始めた。
懐かしさと優しさを感じる匂いに、
過去の記憶がよみがえる。
瀬名の言葉と共に唇を、俺も噛みしめ、
つんと鈍く痛む鼻腔の奥を、押さえこんだ。
「.....今を、全力で生きてくれ」
彼女の両肩を掴み、瀬名が力強く告げる。
其の言葉に応えるかのように、
彼女が真っ直ぐに瀬名を見つめ口を開いた。
其の目は澄んでいて、
それでいて、強い意志を感じさせる。
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