Ⅰ 

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「あの、マイナス点は百で宜しいでしょうか?」 「構わん」  クローディオの承諾を得たトレーシーは手札から三枚選び、左隣に座るドミニクに渡した。そして右隣に座るアルバートから三枚のカードを受け取る。 「どうもこの町【ドゥオ】の町人とうちの町長が知り合いらしくてな、ツテを使ってジジイ越しに依頼をしてきた。普段なら断っているが、オルニス区にはカジノがあると聞いてな、暫くご無沙汰だったから折角だからと承諾した。経費はジジイ持ちだしな」  くくくと、クローディオはデーモン(悪魔)のような嫌な笑みを浮かべた。その表情を散々見てきたらしいドミニクは舌打ちをする。その苛立ちから、彼はトレーシーから奪い取るようにカードを受け取ると、クローディオの前に違うカードを乱雑に置いた。 「その《鳥狂い卿》は噂ではなく、実際に被害が出ているのですか?」 「微妙な所だな。俺の依頼された《鳥狂い卿》は自ら招待状を出すのではなく、ゲストか主催に化けて来て、夜会に来た人間を一日どこかに連れ去るらしい。一日消える事以外は特に被害はないんだが、問題は帰ってきた連中の何人かが近日中に《自殺》をするんだそうだ」 「《自殺》!?」 「思いっきり被害出てないか……?」 「しかもただの自殺ではない。決まって《焼身自殺》をする」 「げぇっ!」  ベニーは思わず身震いをした。体を焼く痛みと熱さと息の出来ない苦しみの中で死ぬ、なんて想像もしたくない。やむを得ぬ事情で自殺したとしても、何故わざわざ辛い方法を選ぶのか。ベニーには到底理解が出来なかった。 「被害者が卿の話をした訳ではない。よって自殺の原因が卿とは限らん。それに《鳥狂い卿》のワードが絡む割に、この事件は卿の溺愛するという“鳥”が全く絡まん。関連性がない。なのに犯人は噂の中で語られる《鳥狂い卿》という事になっている。妙な事件だ」  クローディオはクラブの三をテーブルの中央に出す。  ベニーはクラブのKを出しながら、彼に「ちょっと待て。噂が先なのか?」と訊いた。
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