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いつの間にか寝ていたみたいだ。
もやがかかったように、はっきりしない頭をなんとか覚醒させると、枕元の携帯を手に取る。
時間は四時三十分を少し過ぎたところだ。
そろそろ行かないと間に合わない。
学校裏の丘、そこが僕らの活動場所だった。
丘の上からは町が一望できる。
朝は日の出を浴び輝く町、夜は人の光に彩られる町、朝と夜とでそれぞれ違った顔が見られる、とても景色のいい場所だ。
しかし、登り切るのになかなか体力を使うためか、人がいるところはあまり見ない。
そんな隠れた名所のような場所に、毎週金曜日、僕らは息を切らして集まっていた。
ベッドから重い腰を持ち上げる。
正直あまり行きたくはなかった。
けれど、もし今日行かなければ、荒井との間に修復不可能な溝が出来てしまうような、そんな気がする。
もう、友達をなくすのは嫌だった。
それに、渡したいものといのも気になる。
意を決して、家を出た。
昼は目を細めるほど眩しかった太陽も、今は赤く染まりつつある。
日没まではあと一時間ほどあるだろうか。
夕日を横から浴びながら自転車をこぐ。
学校を通り過ぎて丘のふもとまで来ると、自転車を降り、そこからは歩いて登った。
坂の途中で、丘の上の小さな影に気づく。
近づいてそれが荒井だとわかった。
荒井も僕に気づいたらしく、黒いシルエットの手が左右に振れる。
息も切れ切れ、ようやくたどり着いた僕に、荒井は少し笑みを漏らしたが、僕は笑う気にはなれなかった。
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