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荒井の視線を感じる。
それと同時に、彼の苛立ちのようなものが、空気を通して伝わってきた。
僕は目を合わせることもしないで、ただ夕日を見ていた。
「その時計と同じだよ。お前の時間は、あの事故から、ずっと止まったままだ。昼休みになってすぐ携帯を確認するのも、いつもその時間に由実からメールが来ていたからだろ? 昼飯の机だって、お前わざと三人掛けの机選んでるだろ? 金曜日にバイト入れないのもそう。その時計だってそうだ。壊れてるのにずっと付けてる」
なおも荒井は続ける。
「もういいだろ? そういうのは、もう今日で終わりにしよう。見ていられない。由実だってそう望んでるよ」
それは違うと、僕は思った。
これは僕がしたくてしてることだ。
由実のためじゃなく、僕自身のためにしていることだった。
由実にはもう謝ることが出来ない。
そのせめてもの償いだった。
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