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それから一週間はこの日のようなことはなく、いつものように僕らは過ごした。
会っては背中を叩かれ、どうでもいいようなことを言っては笑う。
よく言えば穏やかな、悪く言えば退屈な、そんな日が続いた。
そして一週間後の同じ曜日、金曜日の昼休み。
昨日のテレビ番組の話でひとしきり笑った後、唐突な荒井の一言が、否が応にも先週のことを思い出させた。
「今日もバイトか?」
僕の笑顔は水をかぶったように消え失せ、気づけば荒井も真剣な表情である。
一瞬考え、嘘をついた。
「うん」
僕の言葉を受け、荒井の目つきが鋭くなる。
眉間に刻まれた二本の線が、彼の不快感を表していた。
「今日さ、久しぶりに、サークルやろうと思うんだけど」
放たれた声はいくぶん口調が強い。
それに少し気圧される。
先週はバイトがあると言えば、それ以上荒井が追及することもなかったが、どうやら今日は違うらしい。
彼は今日は机を見ていない。
まっすぐこっちを見ている、目をそらすことも許さないほどまっすぐ。
その顔が、その目が言っているのだ。
逃げるな、と。
けれど僕は、それに応えることができない。
「ごめん、バイト、あるから」
それに、
「それにサークルだって、もう僕ら二人だけだろ? 無くなったのと同じだよ」
そう、今は二人。
かつては三人いたが、今は二人しかいない。
脳裏にかつていた三人目のメンバーがよぎる。
名前は由実。ショートカットの明るい女の子だった。
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