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遠い日の記憶が蘇り、
「私と付き合ってください」
顔を赤らめる由実の表情が、鮮明に頭に浮かんだ。
恥ずかしそうに、あるいは不安そうに、それでも、決して俯かず僕を見つめる由実。
僕がサークルに参加して、およそ三カ月経った頃のことだ。
由実に告白された。
いろいろと悩んだ末に、その告白を受けた。
でも、本当は由実のことを好きではなかった。
もちろん、かけがえのない友達であったし、荒井と同じぐらい由実は大事な存在だった。
ただ、それは友達としてであり、異性としてではなかった。
壊したくなかったのだ、あのときの関係を。
僕にとって、二人と過ごす時間は例えようもなく楽しく、きっとそれは二人にとっても同じだと、確信していた。
告白を断わったくらいじゃ、僕らの関係は揺るがなかったかもしれない。
でももし壊れたら……。
そんな不安に結局は負けてしまった。
僕は由実を好きじゃなかった。なのに、こんな僕を助けるために由実は死んだ。
ごめん。
ごめん、由実。
何度謝っても足りない。
けれどもう、一度たりとも謝ることはできない。
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