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春。
桜の花びらが風に揺られてくるくる回りながら落ちる。
この道を通るようになってもう1年も経つのか。
少し急な坂をノロノロと歩きながら川原裕紀は去年の今頃を思い出した。
といっても、記憶に残っているものはたいして多くない。
寧ろ他の高校生に比べて少ないだろう、圧倒的に。
友達と休み時間に話した覚えもなければ、一緒に弁当を食べた記憶もない。
放課後クラスの誰かが「遊びに行こうぜ!」と誰かを誘う中、裕紀は鞄にせっせと荷物を詰め、もう此処には用はないとでも言うように玄関へ向かう。
それが、川原裕紀という1人の人間の毎日だ。
思い返してみると案外つまらない毎日なんだな、俺って。
まあ別に良いけど。
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