騒音製造機ステファニー

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 私という音源から発せられる音。それはいつもはテレビから流れてきていたものだった。十数年前、少年だった私を震わせた音だった。戦いをしたいわけじゃなかった。ただ、巨大なロボットに乗りたかったのだ。操縦してみたかったのだ。コクピットに乗った自分を想像するのが楽しみで仕方なかった。だから、決意したのだった。自分専用のガンダムを作ると。  そのために私は必死に機械工学を勉強した。いまだ誰も成し遂げていないことに挑戦するのだ。当時、できることはすべてやった。最新の学説や研究を片っ端から読み漁り、理解できなければ、理解できるまで読みふけった。そして日本語を勉強したのだ。ロボット作りに関しては中小ながら世界トップの実力を誇る工場で働くために。  来た当初はまだまだ片言で、面接では変な日本語を使ったことだろう。だが、それでも親父さんは私を雇ってくれた。十人もいない工場に突然やってきた異国人を雇ってくれたのだ。そして、好きなように設備を使わせてくれた。変なものをたくさん作って迷惑をかけたことだろう。作ったものにグチグチ毎回小言を言ってくる姑のようなところがあるが、親父さんは懐の大きな人だ。私はそんな親父さんをすぐに尊敬するようになった。口が裂けても絶対に言うことはないだろうが。そして、そんな親父さんの周りにいる従業員の人たちのことも当然、尊敬するようになった。いきなりやってきた外国人に不信感を抱いていたのだろう。それでも、彼らは私の技術を認めてくれた。そして、協力するようになってくれた。はたから見ればただのバカげた夢に。叶うともしれないこんなバカげた子供じみた夢に。自分自身諦めようかと思っていた夢に。だから、私はそんな大切な人たちであふれるこの工場を愛している。
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