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「で、ステファニー、おめえ、どうすんだ?」
「どうする……とは?」
自分の音でかき消されてしまいそうな声だった。虚ろになってしまっている目は視線を定めさせない。瞳の動く音がした。
「ステファニー、お前さん、途中で投げ出すか? ガンダムを作るためにうちに来て、結果、てめえがガンダムになって。それで終わりでいいのか?」
親父さんはよっこらしょと膝に手を付けながら立ちあがり、じっと私を見てきた。
「動くたびにガシャンガシャンなるからって、そんなのが夢を諦める理由になるのか? てめえに協力した連中にそう説明するのか?」
「そんなのって――」
「そんなの、だよ。なんでそうなったのか、わけわからんが、これだけは言えるんじゃねえのか?」
親父さんはぽんと、軋む私の肩に手を置く。
「お前さん、好きだからこそ、真剣だからこそ、悩んでいたからこそ、こんなありえねえことが起こったんじゃねえか?」
――――私は
「ほらよ。気分でも変えに行ってこい」
とても軽かったが、それにはとても重みがある。受け取る腕はそう伝えてくれる。
音楽なぞ聞こえやしないラジオ体操を済ませた私は、それを首に巻きつける。
たたたたと、この間の息子の運動会のように軽やかになんていかないだろう。
鎧を着て走っている巨人のような音がすることだろう。
だが、それでも私は軽やかに重量のある足音を響かせるのだ。
準備は整った。発進可能であることは発進音を聞くまでもない。
もう迷いはしない。
ガンダムになった。だったら、作れるはずだ。乗れるはずだ。
愛してやまないガンダムに。
「山崎ステファニー、行きます!」
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