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「な、何事だあ!?」
勢いよく開かれたそのドアから顔を出した親父さんは、そのままの勢いで鉄製の簡素な階段を駆け下りてきた。バットで激しく叩き付けられたように階段は悲鳴をあげる。
「てめえ、今度は何を作りやがった、ステファニー!」
負けじと声を張っているためか、そのがっしりした肩で呼吸している。この騒音の中でも聞こえるほどのけたたましい音を生んだ下駄を履き直しながら親父さんはそう聞いてきた。
「どれだ!? このひん曲がったチャリか!?」
寝起きで乱れた姿で目をひん剥くさまは、ただでさえ極悪面のその顔をさらに恐ろしくさせている。勢いで犯罪でも起こしても不思議ではないほどだ。容易にお縄にかかった親父さんの姿を思い浮かべられる。間違いなく、溺愛している孫がこの姿を見たら二度と近づかなくなるだろう。
「その自転車といえばその自転車なのですけど……」
「んだ? ちげえのか? ならさっきの爆音と、今時々聞こえるこの変な機械音はどこからだ? 盗人でも乗り込んできたかと思ったじゃねえか」
極悪組長面した親父さんにナイフを向けられるほどの肝っ玉のある泥棒なんてそうそういないだろう。そんなやつなら、堂々と銀行でも襲った方がよっぽど実入りが良いに決まってる。人に見つかるのが怖い空き巣連中がこの人に見つかった姿を想像すると面白い。
「で、なんだったんだよ。さっきの音はよ」
「あれは私が勢いよくそこの鉄材のところに自転車で突っ込んだだけですよ。こう、ガッシャーンと」
「んな軽い音じゃなかっただろうが! 明らかに爆発音だったぞ」
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