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「信じて、先生……。
本当だよ。
…ホントに、何も…」
次の瞬間、わたしを抱く腕に
ぐっと力がこもった。
すがるように、
私の身体を
どこまでもきつく、
抱きしめる。
「…先生…」
息苦しさに、やっとの思いで
呟くと、先生は腕を緩め、
私の身体を入口の
引き戸に押し付けた。
身を屈め、いきなり唇を塞ぐ。
少し乱暴にわたしの唇を吸い、
音を立ててゆっくりと
顔を離した。
「…椎名…」
とても悲しげな、囁き。
優しい指先が、
わたしの髪を梳き、
耳にかける。
そして…。
先生は、絞り出すような、
小さな声で言った。
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