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深いえんじ色をした
エレベーターの扉が、
音を立てて開いた。
先生が先に中に入り、
操作パネル側に向き直る。
「…お邪魔します…」
エレベーターにトトト、と乗り込み、
わたしは先生の斜め後ろに立った。
先生は慣れた手つきで、
3階のボタンと「閉」ボタンを
続けて押した。
ゆったりとした動きで、
扉が閉まる。
小さく息を吐くと、
気付いた先生が顔を
こちらに向け、ニッと笑った。
「緊張、しすぎじゃない?」
「…は、はい…」
「エレベーターに乗るときは、
お邪魔します、は
いらないと思うよ」
「……」
先生は、ふいっと顔を
前に向けてしまった。
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