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先生の背中の向こう側で、 鍵の解かれる音がした。 ドアが外側に開いて、 先生が一歩中に進む。 「ん」 先生は、ドアを上の方を 押さえながら振り向き、 わたしに入るよう促した。 「お…お邪魔、します…」 先生の腕をくぐるようにして、 玄関に足を踏み入れる。 他人の家に初めて入る時に感じる、 知らない家の匂い。 …なんだろう…。 微かに、石鹸の香り…。 後ろでドアが閉まると、 外の太陽光が唐突に遮断され、 そこは音のない 暗い空間に変わった。 鍵をかける金属音と、 先生の履いたデニムが 擦れる音、スニーカーを脱ぐ音。 「どうぞ」 パチ、と音がして、 玄関に灯りが灯った。 先生は私の横をすり抜け、 先に部屋に上がり、 廊下を進んでいった。
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