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よく磨かれたシンクに立ち、 わたしが機嫌良く マグカップを洗っている 隣に並んで、 先生が調理台の上に 紅茶の入った缶を3つ、 横一列に並べていく。 「どれがいい?」 「何があるんですか」 わたしは首を伸ばし、 ラベルを覗き込んだ。 「アッサムと、 ダージリンと、シッキム」 「シッキム…って、 どんな味ですか」 「ダージリンに似てるかな。 渋みが少ないかも。 飲んでみる?」 「はい」 「ん」 先生がティースプーンの柄で 缶の丸い蓋をポコ、と開けると、 ほのかに茶葉の香りが漂う。 ピピピ、という音に振り返ると、 ダイニングテーブルの上で、 電気ケトルがお湯の 沸騰を知らせていた。
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