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「…ほしい」 呟きながら値段を チェックしようとすると、 先生がそれをひょいと 取り上げた。 「買ってやる」 「え。…でも」 「血液検査の注射、 ガマンしたから、ご褒美」 「……」 わたしはワゴンの中に目を落とし、 お揃いの青い星マークが入った、 丸くないシンプルな形の マグカップを取り上げた。 「じゃ、先生も注射 頑張ったから、わたしも ご褒美で買ってあげます」 「いいよ、俺は」 「でも…お揃いにしたいんです。 家で勉強しながら紅茶飲んでても、 先生が自分の部屋で これを使ってるって思ったら、 元気が出るでしょ」 わたしがにっこり笑顔で言うと、 先生は素っ気なく、 そう、と言った。 二人で仲良くレジに向かい、 列の最後尾につく。 レジの脇に積まれた箱を見て、 わたしは先生の袖をくい、と 引っ張った。
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