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先程の恐怖に物を言わず、グレイはただ引き金を引く。
亜音速で敵に襲い掛かった銃弾は、確実に的に当たり、相手を喰らう。
ブラストも頭部の銃で対抗するが、被弾の衝撃と移動しながらの状況下では案の定、狙いが定まらない。
次々とABARの弾の餌食となり、残骸と化すブラスト。
数では負けているが、戦力では自分たちが圧倒していた。
突然、視界の隅のブラストがグレイ目掛けて走って来た。
自爆攻撃だ。
頭部の機銃の弾が尽きたのだろう、相手も最終手段に出たのだ。
「やられるか!」
咄嗟に後退し頭に銃弾を浴びせ、爆発装置を破壊する。
そして、一気に距離を詰める。
「ふんっ!」
相手が倒れる前に、頭部に渾身の蹴りを食らわせる。
大きく凹んだ頭部が宙を舞う。
体は倒れて音もなく溶ける。
グレイは起き上がり、素早く土嚢の陰に移動し、空薬莢を辺りに散らしながら引き金を引く。
思うより手こずっていたが、今回は無事に生還出来た。
「怪我人は救急テントへ向かえ!動けるやつは簡易土嚢を集めて、それが終ったら種(ブラスト頭部の残骸)の始末だ!日没までに終わらせろ!」
戦闘終了の合図と共に後ろから出て来た大尉が、周囲に大声で怒鳴る。
今回は死者は出ていない様だ。
ただ、怪我人がかなり目立っている、大きな怪我をした者もいた。
怪我と言っても、マズルとの誤接触による火傷や、転んで負った捻挫程度でもけが人扱いされる甘々な基準によるものだが。
前からライリーが歩いて来て、「やっと終ったね」と砂を払いながら言った。
「あぁ、今回もなんとか無事だったな」
グレイは、ライリーに助けられた、彼のおかげで命拾いをしたという事を思い出して、少し戸惑う。
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