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講習が終わった時には、もう外は月が高く昇っていた。
町は夕食時、家々から漏れる灯りは、なんだか昔を匂わせる。
一般市民に対して冷めきったグレイの心を、わずかに、一時的に温かいものへと変えた。
ライリーは軍用居住区へ戻り、寮食堂でご飯を済ませるようだ。
グレイは独り、街の酒場を目指した。
「よう、俺の講習はどうだったかな?」
ふと後ろから声を掛けられた。
ダリアルが満面の笑みで駆け寄ってきた。
「まさかお前があの集会の火種だったとはな、驚いたぞ」
「火種だなんて、そんなに退屈したか?なるべく要点をまとめて簡潔に話したけどな。評判は良いとおもうけど?」
「そもそも集会が嫌な人にとっては長かろうが短かろうが変りは無い。だが、今回のは俺は良かったと思うぞ」
グレイはすまし顔で、ダリアルにグッドサインをした。
「俺は今から、酒場に行こうと思うんだが?」
グレイがそう切り出すと、ダリアルの顔が更に明るくなった。
「俺もさ、行こう!」
酒場は西門から中央通りをしばらく歩いて右にある。
グレイは辺りを見渡しながら、ため息交じりで言った。
「にしても…この辺は随分と”あの事件”当時より変わったな」
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