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やや間があって、ダリアルが口を開いた。
「大きな被害に遭うと、人は協力しやすくなる。事件で政府が潰れてから、軍が表舞台に立つ。そこで、"協力、団結"の言葉を市民にチラつかせ、軍の志願を呼び掛けて兵士を増やす。多くの市民を兵士にすれば、犯罪はともかくとして、この国のコントロールはより簡単になる。復興も兵士に強制すれば、団結して復興作業を行わざるを得ない」
「だが、最近は軍志願すら面倒がる若者が増えて、兵役が義務化されたと。全く、忙しい時代に生まれたもんだ」
「あ、今日は空きがあるっぽいぞ?」
前方に「ボロの酒場」と書かれた大きな看板を掲げた、小さな小屋と大きなドームが見えた。
いつもは、入り口が見えない程人が居るのだが、時間の問題だろうか、人は見当たらなかった。
この酒場「ボロの酒場」は、定期的にイベントも行われ、町一番の人気と活気を誇る酒場だ。
”あの事件”前は、あまり目立つことのなかったこの酒場。
他の飲み処が倒壊し、唯一残ったこの店は、ボロボロながらも充実したサービスを、兵士から市民まで幅広く提供している。
”あの事件”によって、唯一、大成功を果たした店であった。
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