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「すごい酒臭いな。」
「この時間はおっさんたちの溜まり場だからな。」
「ははは、俺らもそれに含まれてるんじゃないか?」
グレイが笑った傍から、ジョッキから溢れんばかりのビールと、ちょっとしたおつまみが運ばれて来た。
二人はそのビールジョッキを手に取り、快い音で乾杯をする。
「久々に肩の力を抜いた気がするよ…。」
「そんなに物資調達任務は大変だったのか?」
「そりゃあそうさ。何回も追っ手に付け回されたり、少し人通りの少ない道に出ると、周りから銃を持った人がぞろぞろ出てくるんだ。」
「C.B.カンパニーにばれてるのか!?」
グレイは身を乗り出し、ダリアルに聞いた。
ダリアルは相変わらず落ち着いた風貌で、一口ビールを飲んでから口を開いた。
「違う、いや、それもあるのかもしれないが、そいつらは協力してくれた国の国民さ。」
グレイはその言葉を聞くと、唖然とした様子で静かに椅子に座った。
「物資に飢えた奴らが寄り付いて来るんだよ。略奪したらそれを売ってお金にする。盗賊、って言ったほうが良いか。」
「盗賊か・・・どこの国にもひもじい奴らがうじゃうじゃ居るんだな。全く、ひどい世の中だ。」
グレイはビールを一口飲み、大きく息を吐く。
「それで、C.B.カンパニーにばれてる可能性もあるのか?」
ダリアルはおつまみを片手に、真上にある、コード丸出しでぶら下がる電球を見つめた。
「ああ、恐らく。情報を提供してくれた彼も、たぶんそれは知ってるんだろう。今頃彼は、C.B.カンパニーに戻ってるだろうな、もちろん囚人としてな。彼は家族がいないらしい。失うものは何も無いし、もう歳だから、せめて最後は善人を全うしたいと言ってた。」
「とんでもないくらい善人だな…俺らも見習うべきか」
グレイはそうつぶやき、おつまみをゆっくりと口に運んだ。
「お待たせしました、ご注文の品でございます。」
またも丁度良いタイミングで、メインディッシュが届いた。
二人は、この店の看板メニュー「ミートオブミート並」を頼んだ。
熱い鉄板の上で踊る肉汁。
食欲をそそる肉の焼ける音とにおい。
ソースをかけると、一斉に湯気が沸き立ち、濃いソースのにおいが鼻を満足させる。
顔が湯気で暖まり、心は熱くなる。
”並”なのだが、量は明らかに”並”ではない。
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