日、いつも変わらぬ世界

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 ここは、他の国から隔離された小さな国、ランドローレン。  この国は他とは異例で、軍が直接国を治めている。  いや、国の存在を辛うじて保っていると言うべきだろう。  とある貧相な仮家の一室、四十代半ばの男が冷たく窓の外を眺めていた。 「地獄みたいだな…」  黒く焼けた家。  荒風に灰が舞う道路。  鉛色の空。  トタンの屋根を冷たい風が抑揚をつけて撫でていた。  ”あの事件”が起きてから、国民の生存だけでなく、国の存続すら脅かされるようになった。  国の半分が消えるのは、今の時代では容易く、一瞬の出来事である。  しかし、ここランドローレンの場合は、”あの事件”によって文字通り”一瞬で消えて”しまった。  ふと、遠方から聞き慣れた飛行機の滑空音が聞こえていた。  次第にそれは大きくなる。 「”敵ブラスト投下を確認、第一、二、三班は速やかに西門へ移動せよ、繰り返す…”」  傍の無線機が、僅かに振動しながら鳴る。  程無くして、窓の外は騒がしくなり、多数の足音と金属の接触音で埋め尽くされた。  ”黒い棒人間”型兵器「ブラック・スティックフィギュア」、通称「BlaSt(ブラスト)」。  世間、といっても、被害を受けているのはこの小国だけなのだが、一般がそう呼び始め、それが軍内でも一般名称として使用されたのは最近の事だ。  この”生物じみた”兵器の事がだんだんと解り始めている証拠だろうか。  そしてこいつが、いつもの様に、敵勢力によってこの地に投下された。 「はぁ、またか…」  重い腰を持ち上げ、机上の弾薬ポーチを腰に掛ける。  その隣に放置されたハンドガンにマガジンを差し込み、それを右足のホルスターに装備し固定する。  壁に立てられた対ブラスト用アサルトライフル「ABAR(Anti BlaSt Assault Rifle)」を手に取り、マガジンをセットし、照準を調節する。  最後に、首から「Glay Darlet(グレイ=ダーレット) /SFC.」と彫られた錆び付いたドッグタグを提げる。
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