日、いつも変わらぬ世界

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 制服を着ていない所からして、今日は当番ではない様だ。  グレイは木の板を入り口に立て掛け、兵士を無視して集合場所へ向かった。  この国に住む二十歳以上の男子に課せられた義務、兵役。  実は、兵員の消費が非常に低い、生かされた戦争をしている小国にとって、その徴兵はあまり必要性は無く、国民に対する意識確認のためだけに徴兵していると言っても過言ではない。  その兵役で召集を受けた若者は、準衛兵として、職業軍人と区別される。  彼らは、軍に所属する者の特権、銃の所持権と医療機関利用の優先権は適応されない、一般男子から無作為に選出したのだ、それが妥当だろう。  その準衛兵も含めた兵士たちがそれぞれ六人の「班」と称される集団を作り、徴集時は主にそのメンバーで移動する。  第一班、とはその二十もある班の中のひとつだ。  これらが毎日交替で周囲を見張り、国を守っていた。  まだ班ごとに整列が完了していない、他の班の人や見送りの市民やらが入り乱れ、ちょっとしたお祭り騒ぎとなっていた。  いつものことながら、不快に思う。  自分の様に、班のリーダー格になると、班員、特に準衛兵の家族やら友人やらから、口うるさく言われるのだ。  その内容のほとんどは、身内の安全を優先した物ばかりだ、他人へは感謝どころか、応援の声も無い。  しかも、そう口出しする人のほとんどが、前線の厳しさを目の当たりにしていない輩ばかりなのだ。  あると言っても、まだ思慮分別の無い子供が、見境いなく愛想を振りまいているくらいだ。こんな純粋な可能性が、数年も経てばこんなに荒んだ色に染まってしまうのが勿体無くてしょうがなかった。  人ごみをかき分け前に進む。 「あ、グレイ!こっちだよ」という声が掛けられるまで、戦友の顔に気付かなかった。
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