第1話

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寮のベッドに横たわり、僕は考える。これまでの人生、これからのこと、現在の自分。考えるだけ考えて満足して、小さな端末に思いを綴る。 特にいじめられることもなく、目立った活動もせずに、親の恩恵を受けながらぬくぬくと育ってきた。後悔も反省もない。 強いて言うなら中学生くらいの時に、原宿に遊びに来ればよかった。あの頃の僕には東京という街は憧れでもあり恐れでもあったから、結果出てくることはなかったんだけれども。 まぁ出てきたところで当時のぽっちゃりとした体型では声もかけられなかっただろう。すべては推測でしかないが、もう戻らない過去のことをあれこれ考えるのはいい時間潰しになる。 今いる大学にしたってそうだ。もう授業に顔を出すこともほとんどなくなってしまった。学部の友達の名前も殆ど忘れている。いや、そもそも名前すら覚えていない時点で友達ではないのかな。 寝返りをうつ。最近ハマっている甘い煙草の香りが鼻をくすぐる。ベッドの脇のダッフィーを抱えながら、来週のことを考える。将来のことを考えるのは取り敢えずやめよう。現在の所持金は1200円。これを25日のクリスマスまでに100倍にしなければいけないのだから。 そう考えてまた憂鬱になる。増やしたところで相手がいなければなんの意味もない。オフ会に参加しても自分から番号を聞かないようでは、発展性がないというものだ。 LINEが鳴る。ヨーヘイさんからだ。 『今度うちのbarに来てよ』 宣伝か。断る理由もないけど今はお金がない。明日即金で5000円ならてに入らなくもないが、妖怪の相手をしながらお酒を飲むのはそろそろ飽きてきたな。ホストってやっぱりつまらん仕事だと心のそこから思う。思うだけであって、まだその世界にずるずるとしがみついているわけだが。 パソコンをつけて、人狼ゲームを立ち上げる。嘘の世界。僕の引きこもれる場所。ただいま、今日もまた来てしまった。 『自動で開始しますね』 『初日なしなので気をつけてください』 『離席蹴ってー』 『放置追放が実行されました』 『離席っく』 『タバサさんがこの村にやってきました』 ゲームが始まる。image=479169111.jpg
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