私は屑だから、だから私は幸せでした

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彼が狂っていると気が付いた時、 私は青年に抱き抱えられていました。 それに気が付かずに私は意地汚く彼の腕をねぶっていたようです。 「わーい、捕まえた!!」 耳元から軽い調子で声がしました。 「あははは、震えちゃって面白ーい!!」 私は昔もさっきも、男の人に血喰いという、それだけの理由で襲われたことがあります。 青年はそんなトラウマをほじくりかえすように 喋って、 私が血喰いだから得ることが出来なかった優しさを頭を撫でながらくれました。 「君はどんな名前なの?」 「なんで僕が怖かったのかな?」 「涙が出てるよ? いいよ、泣いても…」 知らない人なのに 知ってるみたいに馴れ馴れしくして、 怖くなったら優しくして、 この人はきっと悪いなんだと思ったら血を一口くれて、 頭の中がドロドロにされているのだけがはっきりわかりました。 夜なのだろうと気が付いた時に 「あははは、ほーらお家着いたよ? 暗いと危ないよね。 早くクゥさんの所に行ってゆっくりお休み。」 そんな声が聞こえて、ドロドロが終わってしまいました。 「それじゃあ、またお話。 聞かせてね、リアちゃん!!」 青年は自分の名前も言わずに笑って闇に消えました。 藁みたいなもので組まれた木の家の前で、 ボーッとしていると私の付き添い人が心配して現れました。 それが私がなんだかわからない心地いい気持ち、 たぶん幸せになった一日目でした。
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