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諦めかけた、その時だった。
「失礼しまーす」
暑さなど微塵も気にしていないかのような活発な声が響いた。
聞き慣れた声。それは俺の受け持ちのクラスの生徒だからだ。そうか、今日は日直だったのか。偶然とは恐ろしい。
「竹ちゃん。クラスの名簿を取りに来たよ」
「水野か。いい所にきた」
「へ?」
水野香澄は心当たりがないのだろう、眼を丸くしていた。
衣替えはとうに過ぎた。白くて風通しのよさそうな制服。
セミロングの黒髪をヘアピンで分けていた。
背は低すぎず高すぎず。至って平凡、いや美形の部類には入るか。顔のバランスもいいし。
冬服は紺色の制服だからか、白に変わると印象もガラッと涼しくなる。
と、当初は思っていたが、そう変わりなかった。
そんなことはどうでもいい。
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