第2話

49/57
前へ
/123ページ
次へ
――昔々、ある一人の船乗りの少年がいました。 彼はまだまだ駆け出しの船乗りで、掃除やら洗濯やらの雑務ばかりを請け負わされていました。 けれど、少年はそんな日々を苦痛に思ったことはありませんでした。 何故なら、女の身でありながら、男に負けないくらい逞しく剣をふるう、少女に恋をしていたからです。 少女は下っ端である少年にも分け隔てなく接してくれる、優しい心の持ち主でした。 ある時、誰も予想もしていなかった程の大きな嵐が、少年の乗る船に襲いかかりました。 何人もの船員が海に落ち、少年は仲間を助けようと必死に縄を何本も海に投げ入れました。 けれどそんな中、どの船員よりも勇敢な少女が部屋から全く出ようとしなかったのです。 少年は仲間を救う為に、彼女に助けを求めました。 しかし、少女は頑なにそれを拒否するのです。 なぜ? そう聞いても、少女は答えることもせず、ただただ首を振るばかり。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加