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扉を開けると真っ暗だった。
人が居ないのか。
そう思って引き返そうとした時だった足下で何かが引っかかった。
カチャンと転がった何か。
それは女物のヒールだった。
そしてそれと同時に、二階で何かが軋む音が鳴り響いた。
興味本位で音を立てずに音のする方向へ歩いていった。
近付くにつれて大きくなる声。
耳を塞ぎたくなった。
聞きたくない、見たくない。
心の何処かの何かが崩れるように音を立てる。
「せ…せん……い」
ベッドがギシギシと軋む音。
喘ぐ声。それがどんどん加速していく。
自分がどれほどまでに卑劣な行動をしているのか。
そのくらい分かっていた。
けど、
――その声の主が新城彩愛じゃない。
そう信じての行動だった。
暗闇の中で浮かび上がる2つのシルエットが重なり合う。
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