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部屋の中央部にある大きなキャンパス。 その前に座っている先生。 黒の柔らかい髪が揺れた。 「……やっと来た」 先生はゆっくり立ち上がって、こっちに向かってきた。 「はい…。 連絡も入れずにすいません」 清潔そうな黒髪を徐に耳に掛けた。 白いYシャツは、所々皺が寄っている。それに裾には絵の具が幾らか飛び散っている。 キャンパスの方に目をやると、描き掛けの風景画が。 電球を新しくしたのか蛍光灯の光が先生を照らした。 "端正"――その言葉が最も似合うのは誰か?とどんな状況下訊かれたとしても必ず俺は、槇本蒼と答えるだろう。
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