14人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなにジタバタしたら、落っこちるぞ」
「えぇー。なぁーにぃー?」
支離滅裂なことを繰り返しながら、三春は上機嫌で笑ってる。
「ふっふぁー」
「お、おい!本気で落ちるって!」
人通りの少ない道は、街灯だけが俺たちを照らしている。
真っ暗ではないけど、背後の三春の様子まではっきりと確認出来る程ではない。
挑発だと勘違いしたのかさっきよりも暴れ出した。
三春の体がスルリと俺の背中からずり落ちていった。
「あっ!」
咄嗟に三春の腕を引っ張った。
反射的な行為だった。
「………」
ほんのり唇に残る甘い香り。
他人の唇の感触。
目と鼻の先に、三春の目が覗いた。
「あ、ご、ごめん!」
錯乱しまくっている俺を他所に三春は変わらず笑っていた。
立ち竦む俺を尻目に、三春はぐたっと地面に崩れ落ちた。
その顔にはもう笑みは残ってなかった。
「はあ……ほんっと…なんなんだよ…狂わせられたよ…」
最初のコメントを投稿しよう!