25 #2

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25 #2

日本に着いて、実家まで戻り驚いた顔で出迎える母さんに訳を話した。 母さん自身、俺が向こうに行くのはあまり賛成はしていなかったから、逆に嬉しがっていたけど。 父さんが帰って来る前に家を後にして帰る途中に使い捨ての携帯電話を購入した。 時間が限られているのは充分承知の決断だった。 向こうと日本では、経由なしでも10時間は見積もって置いた方が安心だし、時差ボケが残ったままで仕事に就けるわけもない。 俺に与えられた期限は一週間。 短い期間で、あいつを振り向かせることなんて出来る自信も余裕も俺には持ち合わせていなかった。 ただ…今度は、花本蒼の群像の俺じゃなくて、ありのままの俺を見て欲しかった。 髪を染めて、手入れを怠った髪はもう真っ直ぐに伸びていた。 笑い方ももう先生のようにはもう出来なくなっていた。 彩愛さんとの一件以降、俺の中での花本蒼が徐々に死んでいっていた。 もう半年前の俺じゃない。
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