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彼と一緒に外へ出てバス停までの道のりを歩く。
誰もいない世界で、誰もいない町というのはこうやって見ると、とても寂しい風景だ。
快晴とはいかないが、よく晴れた早朝。
雲がゆったりと流れ、聳え立つ富士山も日差しを浴びて山頂に注いだ雪を輝かせていた。
彼と手を繋いで歩く私だが、先程感じた感覚に違和感を覚えていた。
彼の手を掴んだ後、微かに小さな鼓動のようなものが聞こえた気がした。
あれは一体何だったのだろう。
「どうしたの?なんか気難しい顔してるけど?」
「あ、いや……別に何でもないよ。気にしないで」
彼はそれでも心配そうな顔をしていたが、それ以上は何も聞かずに歩みを進める。
やがて見えてくる見慣れたバス停。
私と彼が出会った思い出の場所。
あれからそれほど時間がたった訳じゃないが、何故かあの日が酷く懐かしく思える。
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