最終話 最後の選択

2/18
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
彼と一緒に外へ出てバス停までの道のりを歩く。 誰もいない世界で、誰もいない町というのはこうやって見ると、とても寂しい風景だ。 快晴とはいかないが、よく晴れた早朝。 雲がゆったりと流れ、聳え立つ富士山も日差しを浴びて山頂に注いだ雪を輝かせていた。 彼と手を繋いで歩く私だが、先程感じた感覚に違和感を覚えていた。 彼の手を掴んだ後、微かに小さな鼓動のようなものが聞こえた気がした。 あれは一体何だったのだろう。 「どうしたの?なんか気難しい顔してるけど?」 「あ、いや……別に何でもないよ。気にしないで」 彼はそれでも心配そうな顔をしていたが、それ以上は何も聞かずに歩みを進める。 やがて見えてくる見慣れたバス停。 私と彼が出会った思い出の場所。 あれからそれほど時間がたった訳じゃないが、何故かあの日が酷く懐かしく思える。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!