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近所のマイナーな神社は、
深夜だというのに
かなりの人出だった。
鳥居の手前には、
『磯辺もち』と書かれた
のぼりを掲げた
屋台まで出ている。
階段を上っている途中から
香っていた、
醤油の焦げる匂いに
密かに魅かれていると、すぐ脇を
和服に身を包んだ
若い女性がすり抜けて行った。
カレシと腕を組み、
慣れない草履で
ひょこひょこと歩いて行く。
…いいなあ、振袖…。
ちらりと見ると、
先生もその振袖の女性の後姿を
じっと見送っている。
…先生、…見惚れてるし…。
「ちょ、ねーちゃん!
下唇がぺろんてなってるよ、
ぺろんて」
「……」
先生と目が合ったわたしは
急いで下唇を引っ込め、
思わずぷいっと目を逸らした。
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