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*** 「うまいな、これ」 甘酒を口にした先生が 感心したように呟いた。 「でしょ。俺、甘酒は 好きじゃないんだけど、 この神社のは飲めるんだ」 祐希が得意げに言った。 貰う時に先生が 聞いたところによると、 この特製の甘酒は アルコールと酒粕は使わずに 米麹だけで作っているため、 未成年でも飲めるし、 飲んだ後の運転にも 差し支えないとのことだった。 それをきちんと確認する所が、 すごく先生らしい。 わたしは、紙カップの中を フーフーしている先生の顔を こっそり見つめた。 …あんなに長い時間、 何をお願いしてたのかな。 …もしかしたら、 クラスの受験組全員の 顔を思い浮かべて、 合格祈願してたのかも…。 わたしたち受験生も もちろん不安だけど、 …担任の春山先生の心の中には、 生徒と同じ数の不安と、そして 同じ数だけ願いがあるのだと思う。
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