第3話

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『お待たせしました』そう伝え彼のデスクの前で立ち止まると、座り心地の良さそうな椅子の背もたれにぐっと身体を預けて『ハナに日本に行ってもらいたい』とニッっと白い歯を見せてボスは笑った 『どういう事ですか?今度の日本の会社との共同プロジェクトのスタッフは先日発表されましたが、私はそのメンバーから外してもらってます。』 『十分分かってるよ。しかし、日本支社からのたっての希望だよ。君が来る事を望んでいる』 『…申し訳ありませんが、お断りします。私は日本には行きたくありません』 そうボスに食ってかかると、隣で一緒に立っていたアンナから『私からも日本行きをお願いするわ』と肩に手を置かれ眉を下げて頼まれる。 アンナは、入社してからずっと一緒に仕事をしてきて私生活でのよき理解者であり仕事面ではよきライバルでもある。今回のプロジェクトのトップに抜擢されていて、日本行きを一番に決め期待されてる人物でもある。 彼女からも頼まれ心底困り果てる… 『私に決定権は?』 『残念ながらないね…すでに、日本のメンバーは君を受け入れる準備をしているようだよ。フーカのこともあるしね。アンナは日本語が一応喋れるが、向こうの企業とのやりとりまでは厳しい。彼女の通訳兼秘書兼サポーターとして行ってもらいたい』 『私からもお願いするわ』 『……期間は?』 『約半年と言ったところか…日本は君にそのまま残って欲しいとも言っているがね…それは、君に決定権をゆだねるそうだ』 『日本でのメンバーのトップは?』 『本間だよ』 よく知った名前に大々的にため息が出る。とにかく仕事ができるのにワンマンなやり方と正確で有名な彼が言いだした事ならもう断ることもできないのだろう… 日本に行く…帰ると言う事… 『分かりました。フーカにも話をしないといけないので、今日は早々に帰宅させてもらいます』 少しだけ意地悪い顔で口角をあげて言い残し、オフィスを後にした
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