第3話

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「お荷物は以上になります!本日はありがとうございました!」 真っ白な靴下に履き替えたつなぎ姿のお兄さん達が頭を深々と下げ玄関を後にした。頼んだのはこちら側なのに何だか恐縮してしまう。 『さて、片づけますか?』とこれから一緒に暮らすアンナに声をかけると、めんどくさそうに『明日からじゃ駄目~?』とソファーに寝転がってしまう。時差ぼけに引っ越しの荷造りにプロジェクトの準備にとここ数日不眠不休だった私たち。実際、私も身体の調子がおかしい。 「ある程度の家具と家電は揃えてありますから、細かいものは今後ゆっくり片づけて行かれればいいでしょう?」 そう言うのは、日本人にしては結構な長身でスーツをびしっと着こんだ日本支社の天野さん。以前、本間さんと一緒にあっちで仕事をした事があったから面識もある。 「天野さん、何から何まですみません。久しぶりの日本に少し戸惑ってたので、かなり助かりました」 仰ぎ見るようにそう彼に礼を言うと「お力になれたようで良かった」と堅物そうだけど、笑うととてもやわらかく微笑む彼。「住民票やらいろいろ手続きが面倒だとは思いますが、分かりやすいようこちらにまとめてあります」と封筒に役所の地図やら手続き方法などを書いたものが何枚も入れられていた。
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