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空に向かうS字状の光の筋が、
夜明けに照らされ、徐々に
溶け消え始める。
夜と朝の境目が、こんなにも
くっきり分かれている空を、
わたしは初めて見たかもしれない。
キンと冷えた空気に、
少しずつ光の気配が滲んでいく。
いつもの展望台の
手すりにもたれ、
わたしは東の空を見つめていた。
「まだ、もう少しかかると思うよ」
隣に並んで立つ先生が、
時計を見ながら言う。
「でも、お日さまが出た瞬間を
見逃がしちゃいそうで」
わたしは出来るだけ瞬きを制御して、
じっと初日の出の出現を待っていた。
「祐希、本当に起こさなくていいの?」
先生が、車で眠っている
祐希の方を示しながら訊いた。
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