幸福を笑う者は幸福に泣くんだ

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「いいですか皆さん?世の中には、学ぶことの出来ない人が数え切れないほどいるんです。学べることが、幸せであることを知りなさい」 そう言われたのはいつだったか… 確か、先生が講義中に居眠りをしている人を見つけた時だったと思う。 松陰先生は「松下村塾」という塾を開いており、身分を問わず平等に接してくれる先生を慕いそこへ通う者は少なくない。 それなのに、自ら教えを請いに行っているのにも関わらず、居眠りをして学ぶことを放棄したその人に、先生にしては珍しく厳しく叱っていた。 そして、その後に皆に放った言葉がこれだった。 「ここにいる皆さんは学ぶという行為に慣れ、今では学べることが当たり前のように感じている人も少なくないと思います。ですが、それは大きな間違いです。本来学ぶことは誰にでも許されるべきことであると私は思っていますが、このご時世、その考えを受け入れてくださる場はほとんどありません。だからこそ、これは他のことにも言えることですが、今皆さんが当たり前と思っていることこそが幸せなことだということを、忘れてはいけませんよ?」 当たり前な日常が幸せであると、先生は言った。 けど、この時の私にはその意味を理解することは出来なかった。 理解出来ていれば、何か変わっていたのかな?
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