第3話 #2

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「おはようございます」 会社に出勤すると、珍しく工場内で、中野 元社長と遭遇する。 「おはようさん」 面接時から、無愛想で苦手だった社長。 ″ 可愛い子供生んでくれよ ″ 今朝の正造の事もあって、余計に顔を合わせづらかった。 「佐藤くん」 ひっ 「は、はい、」 滅多に声をかけられないから、ちょっとキョドって返事をして振り返る。 「子供は、元気か?」 「…………え?、は、はい、元気です」 カステラの出来映えを確認しながら、こちらを向くこともなく、 「そうか、頑張りなさい」 と、激励してくれた。 会った事もない娘のことを気にかけてくれるなんて なんだか、今朝の事情を知ってるみたいだ。 それにしても、 社長、色黒だな。 「佐藤さん、おはよう」 パートの古賀島さんが、 「社長となに話してたの?」 と、洗い場でコソッと、わたしに訊ねてきた。 「いえ、挨拶だけです」 いつまにか、この洗い場にも、食器用洗剤が常備されているようになっていた。 「そう、…にしても、佐藤さん、今日目が腫れてるわよ?大丈夫?」 「……………はい………」 そうだ、 前日に沢山 泣いたから。 「…………っいっす」
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