第3話 #2

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「そうなんですか? 同じシャンプーなのかもしれませんね」 私は、平静を装って今日の予定メモを眺めて、材料たちを用意する。 『山岡さん、鋭い』 工場長の目を見れないまま、鍋を用意してバターを入れて火にかける。 「佐藤」 「は、はいはい」 今度は何ですか?! 「お前、レシピ覚えたんだな」 「あ、定番のものだけですよ?」 工場長は、フッと笑うと、 「やればできるじゃん!正社員まで近いぞ!」 帽子の上から、私の頭をポンポンと撫でた。 「……ありがとうございます。」 あれ? いつもの口うるさい、セクハラ親父の時とは違う笑顔に、 頭を触れられても嫌悪感はなかった。 そういえば、はじめに言ってたな。 出来たときは、ちゃんと誉めてやるって。 「佐藤!火にかけてるの止めたら、卵 撹拌機にかけろ!」 「はい!」 そうだ。 たとえ、エッチしてしまったからと言って、 正造と再婚するだけが、芹南を取り戻す術じゃない。 『仕事、頑張ろう』
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