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「山岡さん!」
私が洗い物をやり、工場長が、パイシューの焼き上がり具合を確かめていると、
正造が、こちらの工程に顔を出してきた。
「午後から、プレゼン用試作に、佐藤借りてもいいですか?」
実際、一段落して洗い物をしていた私。
だけど、
「そんな時こそ社員の多良田を使ってやれよ」
山岡工場長は、いつものように、すぐにはOKを出さない。
「ドーナッツ、こいつの提案なんで、アイデアも借りたいし、試させてやってくれないですか?」
正造は、焼き上がったパイの不良を振り分ける山岡さんの手さばきを見つめながら、
OKの返事を待っている。
「その代わり、多良田、ここに回しますんで」
二人の重い空気が、皿を磨く速度を落としてしまうも、耳はダンボ状態。
「わかった」
不機嫌な工場長の声と、
「おら、佐藤、さっさと皿片付けろよ」
偉そうな正造の指示、
「はい」
そして、
何故だか、睨み付ける多良田さんの視線。
佐藤 苺 24才。
正社員になるために、とにかく頑張る。
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