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「トマトのドーナッツって、甘いんですか?」
薄力粉をふるいにかけながら、
トマトピューレをさらに濾す正造の真剣な顔を見る。
「ここ、ケーキ屋だからな」
元芸能人だけあって、
本当に、完璧な容姿なんだよね。
冷たい顔立ちのようで、童顔に見えるのは、大きな瞳のせい。
″ 俺、子供 好きなんだわ ″
この人、
今朝の事、本気なんだろうか?
「お前、粉ふるいは、まだまだだな。筋肉痛になるまで練習しないと、職人にはなれないぞ、
あ、
お前は、なる必要ねーか。」
「……上手くはなりたいんだけど」
「ふぅん」
正造は、自分の作業を中断して、
私の背後に近寄り、
不器用な両腕を掴む。
「こうだ」
私のやり方と違い、高速かつ細かに粉をふるい出す。
「早い!!」
工場長と同じくらい、さらさらの薄力粉が誕生した。
その感動よりも、
こんなに密着して指導してくれることに、ドキドキしてしまっている。
この人とは、
いろんな事、たくさん、しちゃったのにね。
″ キス ″ 以外なら…………
「思ったんですけど、甘くないのってどうですか?
中にトマトのソースと、チーズが入ったイタリア風とか」
ドキドキをごまかすように、
思い付いた事をすぐに口に出してみる。
「チーズ?」
「そう。」
「却下」
「はやっ!」
「だから、言ってるじゃん、ここは甘い夢を売る洋菓子屋なの!
そんなファーストフードは、マクドナルに任せりゃいいんだよ」
………………なるほど。
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