第3話 #2

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甘い夢を売る店かぁ。 しかし、 老舗だけに、正直、古くさいイメージは払拭できない。 年配の人は、カステラや、桃のケーキも売ってるから馴染みあるだろうけど。 「だけど……ここにしかない、斬新なオリジナルを作らないと、お洒落な新しい店には勝てないよね」 卵を割りながら、ちょっと偉そうな事を言ってしまった。 「粉ふるいもまともに出来ない不器用が、生言ってんじゃねーよ」 …………ほら、 怒られた。 「でも、卵割るの、うまくなったな さすが主婦だ」 かと思えば、正造は、 今日の山岡工場長のように私を誉めてくれる。 「生地にトマト混ぜるぞ」 クリーム色の滑らかな生地に、ピンクに近いトマトが、 渦を巻いて、くるくるキャンディのように混じっていく。 これだけで美味しそう。 「レモン汁も入れておくか」 「やっぱりチーズも入れましょうよ」 「やかましい」 揚げないドーナッツ、 自然なピンク色の可愛いドーナッツ。 その 出来栄えは… 「酸っぱいな」 今日のところは、失敗に終わる。 「お疲れ様でしたー」
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