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第3話 #2
きっと、
まだ、酔いが完全にさめていなかったんだ……。
それに、
芹南を優に取られて寂しかったから……
と、
心の中で精一杯の言い訳をする。
完全に明るくなった部屋で、
起き上がった正造は、布団の上で煙草を吸い始めた。
『わたし、ホントは淫乱なのかも』
その正造に背中を向けて、
先ほどまでの快楽の余韻が消えつつある中で
後悔に似た罪悪感が波のように押し寄せてくる。
「そろそろ、俺出るわ。シャツ乾いてねーだろな」
そんな私の感情に気づいているのか、気づいていないのか分からない正造が、立ち上がった途端、
ガチャン!
と、
部屋の隅に置いていたオモチャ箱から、
芹南のお気に入りのアンパンチャンの電動人形が音を立てて落ちてしまった。
「みんな、元気?!アンパンチャンだよ!」
持ち主のいなくなったオモチャが、
元気良く動き出す。
「ビビった、スイッチ入りっぱじゃねーの?」
『芹南……』
こんなときに
わたし、なにしてんの?
後悔と認めたくないのに、
涙が出てきてしまう。
「………………止まった」
正造が、それを元の箱に静かに置いて、
再び、
私の唇に、吸っていた煙草をくわえさせる。
「取り戻そうぜ」
そう、一言残して、
私のアパートを出ていった。
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